東京地方裁判所 昭和53年(特わ)383号 判決 1978年6月28日
主たる事務所
東京都中央区八丁堀三丁目一九番八号
医療法人社団三和会中央病院
(右代表者理事長 斎藤美紀子)
本籍
東京都中央区八丁堀三丁目八番地三
住居
同区八丁堀三丁目一九番六号
医師
斎藤広基
大正一五年九月三〇日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官乙部二郎出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人医療法人社団三和会中央病院を罰金一八〇〇万円に、被告人斎藤広基を懲役一年二月にそれぞれ処する。
被告人斎藤広基に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人医療法人社団三和会中央病院(以下「被告法人」という。)は、肩書地に主たる事務所を置き、病院経営を目的とする医療法人であり、被告人斎藤広基(以下「被告人」という。)は、昭和三七年九月八日から同五二年三月三一日まで被告法人の理事長としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告法人の業務に関し法人税を免れようと企て、診療収入の一部及び医薬品売上を除外し架空経費を計上する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和四九年四月一日から同五〇年三月三一日までの事業年度における被告法人の実際所得金額が一億四九九七万五八六一円あった(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月三一日、東京都中央区新富二丁目六番一号所在の所轄京橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六八五〇万四〇二一円でこれに対する法人税額が二六六八万一六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五三年押第七八六号の符号一)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告法人の右事業年度における正規の法人税額五九二七万円(税額の算定は別紙(三)の一計算書参照)と右申告税額との差額三二五八万八四〇〇円を免れ、
第二、昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの事業年度における被告法人の実際所得金額が一億六〇一二万五六三六円あった(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月二九日、前記京橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六四二五万四一一〇円でこれに対する法人税額が二四八六万一六〇〇円である旨の虚偽の歩人税確定申告書(前同号の符号二)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告法人の右事業年度における正規の法人税額六三二一万円(税額の算定は別紙(三)の二計算書参照)と右申告税額との差額三八三四万八四〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
第一、判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一、被告人の当公判廷における供述並びに大蔵事務官に対する質問てん末書(五通)及び検察官に対する供述調書(四通)(乙9ないし17)
一、登記官作成の登記簿謄本(甲一1)
第二、別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、
(イ) 診療収入(各<1>)につき、
一、大蔵事務官作成の除外窓口診療収入調査書(甲一2)
一、田中穣太の検察官に対する供述調書二通(甲一6、7)
一、被告人作成の「昭和50年3月期における国民健康保険診療報酬について」と題する申述書(乙1)
(ロ) 医薬品売上(各<2>)につき、
一、大蔵事務官作成の医薬品売上に関する調査書(甲一8)
(ハ) 医薬品仕入(各<4>)につき、
一、大蔵事務官作成の医薬品仕入調査書(甲一13)
(ニ) 期末たな卸高((二)<6>)につき、
一、大蔵事務官作成の除外した期末(51・3・31現在)たな卸高調書(甲一14)
(ホ) 医薬消耗品費((一)<5>)につき、
一、大蔵事務官作成の医薬消耗品費調査書(甲17)
(ヘ) 給料(各<7>)、退職金((二)<8>)、旅費交通費((一)<17>、(二)<20>)につき、
一、大蔵事務官作成の架空給料に関する調査表(甲一18)
(ト) 福利厚生費(各<9>)につき、
一、大蔵事務官作成の福利厚生費調査書(甲一23)
(チ) 交際接待費((一)<19>、(二)<22>)につき、
一、大蔵事務官作成の交際接待費調査書(甲一26)
(リ) 修繕費((一)<20>、(二)<23>)につき、
一、大蔵事務官作成の修繕費調査書(甲一27)
(ヌ) 消耗品費((一)<21>、(二)<16>)につき、
一、大蔵事務官作成の消網品費調査書(甲一31)
(ル) 図書研究費((一)<24>、(二)<25>)につき、
一、大蔵事務官作成の図書研究費調査書(甲一32)
(ヲ) 減価消却費((一)<30>、(二)<31>)につき、
一、大蔵事務官作成の減価消却費調査書(甲一33)
(ワ) 雑費(各<32>)につき、
一、大蔵事務官作成の雑費調査書(甲一34)
(カ) 受取利息(各<33>)につき、
一、大蔵事務官作成の受取利息調査書(甲一35)、預金残高及び税引後受取利息調査書(甲一36)、仮払源泉税及び預り金調査書(甲一37)、債券在高及び償還益調査書(甲一38)
(ヨ) 雑収入(各<34>)につき、
一、大蔵事務官作成の雑収入調査書(甲一39)
(タ) 価格変動準備金繰入((一)<40>、(二)<42>)、価格変動準備金戻入((二)<38>)につき、
一、京橋税務署長作成の証明書(甲一41)
(レ) 有価証券償還益((一)<46>、(二)<35>)につき、
一、前掲甲一38
(ソ) 使途不明支出金((二)<50>)につき、
一、前掲乙13
(ツ) 事業税認定損((一)<44>、(二)<55>)につき、
一、大蔵事務官作成の事業税の計算書(甲一42)
(ネ) 雑損失((一)<47>、(二)<56>)につき、
一、大蔵事務官作成の雑損失認容額調査書(甲一43)
第三、別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、
一、押収にかかる被告法人の昭和五〇年三月期、同五一年三月期の各法人税確定申告書各一袋(昭和五三年押第七八六号の符号一、二)
(いわゆる認定給料、認定利息について)
検察官は、被告法人から被告人に対し、昭和五〇年三月期の期首に二二一二万六八八一円、同五一年三月期の期首に一億〇二一六万一八二四円(うち利息対象分九九一六万一八二四円)の各貸付金があり、各期中に右各貸付金額(昭和五一年三月期については、利息対象分のみ)の一〇パーセントに相当する受取利息及び右と同額の被告人に対する給料支払があったものと主張するが、検察官提出にかかる全証拠に徴しても右受取利息及び給料支払の事実は認められず、却って右は後日の計理上の操作に過ぎないことが明白であるから、右各事実は認定しない。
(法令の適用)
法律に照すと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告法人については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告法人については情状に鑑み同法第一五九項第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告法人については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金一八〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において徴役一年二月にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一)
修正損益計算書
医療法人社団三和会中央病院
自 昭和49年4月1日
至 昭和50年3月31日
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(二)
修正損益計算書
医療法人社団三和会中央病院
自 昭和50年4月1日
至 昭和51年3月31日
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(三)の一
ほ脱税額計算書
自 昭和49年4月1日
至 昭和50年3月31日
事業年度分
<省略>
別紙(三)の二
ほ脱税額計算書
自 昭和50年4月1日
至 昭和51年3月31日
事業年度分
<省略>